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お盆と七夕

お盆と七夕について

「お盆」とは、ご先祖様の霊をお迎えし、もてなし、お見送りをする一連の行事です。

日本仏教では「盂蘭盆会(うらぼんえ)」が正式名称と言われますが、この盂蘭盆はサンスクリット語の「ウランバナ(ullambana)」の音写であると言われております(近年では、古代のイラン語で「霊魂」を意味する「ウルヴァン」が語源である、という説も散見するようになりました)。

「ウランバナ」は「逆さづり」という意味で、「逆さづりの苦しみにあっている祖先の霊を供養して助ける」という法要になっており、その論拠は仏説盂蘭盆経にあると言われております。

この仏教行事と、古くから日本で行われてきた「御魂迎え」「精霊まつり」等の先祖崇拝の祭祀が深く結びついた伝統ある宗教行事が、いわゆる私たち日本人が行っている「お盆」です。

日本では、古くから信仰されてきた民間信仰が、外来の様々な宗教・習俗と合わさって保存され、伝承されてきました。

例えば、日本で7月7日に行われている「七夕」は、中国から伝わった織姫牽牛の神話と日本古来の民間信仰が合わさった、お盆と関連の深い行事です。

日本の民間信仰における七夕は「棚幡」であり、元々は先祖や精霊を迎え、送る行事だったそうです。

7月7日を七日盆(なぬかぼん)と言い、お盆はこの日から始まる、という地域が(主に西日本等に)多くあるそうです。お墓掃除等のお盆の準備も、この日から行う伝統が残っている地域があります。

七夕の時期には民家でも七夕棚を作り、竹や供物等で飾り付けを行ったようですが、民俗学者の五来重先生によれば、その形が現代日本で色濃く保存されているのが、各寺院で行われている「大施餓鬼法要」の時の「施餓鬼檀」だそうです。言われてみれば、当山の施餓鬼でも施餓鬼檀(本堂向かって右)は5本の笹竹を立て、五色の幡を掲げて供物を捧げます。

民俗学も、色々と勉強すると大変興味深いですね。

さて、日本の民間信仰では、七夕(棚幡)とお盆はセットなので、7月7日に七夕をするならお盆も7月に揃えるべきなのでしょうが…この辺は明治の新暦採用による混乱で、全国的に対応がまちまちになっています。

お盆については、新暦に合わせて行うことができる地域は7月盆に、仕事の関係(農家の繁忙期を避けるなど)で無理なところは月遅れや旧暦に沿って8月盆に、と地域や家によって大きく違います(当山檀信徒方々では、3分の2が8月盆で、3分の1が7月盆です)。

その点、七夕は中国の織姫牽牛の神話や乞巧奠の伝統の印象が強かった(江戸時代の寺子屋の影響だそうです)ようで、旧暦に合わせると言うよりは「7月7日」という日付重視の地域が多いようです。旧盆に合わせて、8月に七夕を行う地域もあります。

先述の通り、七夕は様々な信仰や伝承が融合した行事ですが、どちらの意味が本来か、ということにこだわる必要は無いと考えております。

由来をそれぞれ知った上で、遠い昔から現代に伝わる行事を大切に思う心を忘れないようにすることの方が、より重要かと思っております。


何かと忙しい現代社会ではありますが、お盆の期間は「ご先祖様とともにある」ことを特に意識して頂き、自分自身のあり方を見つめなおし、ご先祖様含め、すべてのいのちに感謝の念をあらわせる時間を過ごして頂きたく存じます。

合掌

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